プレカット工場の見学
日曜日ですが季節はめぐり、本日より、処暑の末候の【禾乃登:こくものすなわちみのる】です。
稲が実ってくる頃の意味です。
たしかに、田んぼでは、だんだんと先端が曲がってきましたね。
この「びお静岡東部版」では、七十二候の季節の節目ごと、家づくりの情報とは違った切り口で、「住まいと暮らしの視点」からローカルで旬な話題を発信してゆこう、というブログですが、今回のネタは、ちょっと建築屋っぽいお話。
静岡県の木が、住宅になるところ、プレカット工場についてです。
スタッフの遠足っぽくお邪魔したのは、天竜区の天竜プレカット事業協同組合。
案内をしていただいたのは、工場長の佐藤さんです。
よく整理されたきれいな工場です。
プレカット工場は全国に600以上あるはずですが、この工場の歴史は古く、全国でも10番目くらいに出来たのだとか。
日本三大人工美林にも数えられる天竜の森ですが、天竜材は比較的小さめの材木屋がいくつもあり、プレカット工場も、協同組合という形で、地域の林業家や材木屋によって、共同で運営されています。
(以前、天竜の山のお話も、こちらでご紹介しました:炭焼き窯跡)
『目指せ月産4,800坪!』という看板がありましたが、現在では、月産3,000坪くらいとのこと。
一軒が30坪とすれば、月に100軒分の木材が、ここで加工されて建築現場に運ばれてゆきます。
マクスで建てられるお家も、現在は土台と柱が天竜ヒノキ、梁は天竜スギ、ですので、皆この工場で加工されて運ばれてきます。
社長ブログの方で、社員大工による手加工の様子をご紹介しておりましたが、大工が一人で2ヶ月位かかる加工を、機械では1日かからずにやってのけます。
梁は、ほぼ1本あたり1分という速さ。
ただし、難しい加工は別。
こちら↑の加工の様に、斜めにかかる梁(登り梁と言います)は、専用の機械で加工します。
さらに左下の小さな囲いのような、『追掛け大栓継ぎ』のような面倒な継手になると、1本に1時間かかるのだとか。
それでも、大工より早いですね。
こちらがその専用の加工機。
5軸加工機と言って、たしか、XYZ方向+2方向回転で5軸。
開けて見せてもらいました。
鶴の恩返しを覗く心境です。
パカっと後ろが開いて、ドリルも自動で持ち替えます。
スタッフが面白そうに見ています。
皆さんにも見ていただこうと、動画も撮りましたのでご覧ください。
こんなふうに加工されて、家ができるんですね。
今や、日本の木造住宅の9割以上はこのプレカット。
このプレカット材のうち、約半分が人工乾燥材、もう半分が集成材、という感じ。
人工乾燥材とは、窯に入れて高温で乾燥させるもの。
木材は乾燥していないと後で反ったり縮んだりしますので。
ですが、高温でガンガン乾燥させると、内部の防虫防腐効果がある成分や、いい香りの芳香成分などが流れ出てしまい、木の色自体もくすんでしまいます。
そこで、わずか数%ですが、自然に乾かした天然乾燥材を使う会社もあります。
これがその天然乾燥材。
表面の割れが派手に出やすいですが、やっぱり色艶がいい。
設計の祭子ちゃんが香りを楽しんでいますが、木本来の良い香りが天然乾燥材は強いです。
マクスでも、この天然乾燥材を使いたいところなのですが、非常に残念だし納得いかないのですが、静岡県の優良木材認定が取得できず、お客様に補助金が降りないのです。
20万とか補助金でますので、これを棒に振ってまで…というのが現実です。
天竜地区は、良質なスギ・ヒノキの宝庫。
ただ、驚いたことに、この天竜の工場でさえ、地元の木材を使ったプレカットは3割にとどまり、他は外国産材か、集成材なんだそうです。
なんだかとても残念に思ったのでした。
文:鈴木克彦
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