LGBTを理解しよう
本日より、七十二候は「菊花開(きくはなひらく)」です。
名前の通り、菊の花が咲く頃、という意味ですね。
昨日までの季節外れの暑さから一転冷え込み、なるほど、季節は秋だ、上手く出来ているな…と関心(笑)。
さて、そんな本日のお題は、ちょっと真面目なお話。
この「ちいきのびお静岡東部版」は、本家の「住まいマガジンびお」のローカル版です。
建物とは違った切り口で、住まいと暮らしの視点から、ローカルで旬な話題を発信してゆこう、と始めましたが、今回はローカルネタでも、ちょっと異色でございます。
お題にもあるように、本日はLGBTのお話。
富士市では、社会教育の一環で、富士市民大学というものを催しています。
現在は平成29年度の後期。通算で第37回目になるそうです。
昨日は、全6回の講義の5回目。
毎回ロゼシアターで開催されています。
昨日は、LGBTアクティビストの東小雪さんがゲスト。
LGBTって…?
L:レズビアン
G:ゲイ
B:バイセクシャル
T:トランスジェンダー
と書けばお分かりかと思いますが、性的マイノリティーの方を指します。
東小雪さんは、元タカラジェンヌで自身がLGBTのレズビアン。
2013年に東京ディズニーリゾート初の、同性結婚式を挙げた方で、2015年には渋谷区の同性パートナーシップ証明書第一号も取得され、当時マスコミでも大きく報じられたので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
先月末にTVで放送されたバラエティー特番で、とんねるずが30年前の人気キャラクター「保毛尾田保毛男」に扮してビートたけしと夜の東京を歩く、という企画がありました。
正直私は、
「うわ、懐かしぃ!」
と面白く見ていたのですが、ネットでは同性愛者に対する偏見を助長するものである、として大炎上、ニュースにもなりました。
東さんは、LBGTに対する世の中の理解が今より進んでいなかった当時のキャラクターが、今も何の配慮もなく放送されたことが、非常に残念だ、と話されていました。
ネット上のアンケート調査を元に推計した値だそうですが、日本にはLGBTが人口の7.6%存在する、というデータもあるそうです。
アンケート調査なので、この数字がそのまま実際値かは別として、人口の7.6%というのは、13人に1人の計算になり、日本人の名字ランキング上位の、【佐藤さん+鈴木さん+高橋さん+田中さん】よりも多い計算になります。
鈴木さんに会ったことがない、という方、居ないはず。
ということは、知らない間に、LGBTの人には会っているし、むしろ、まわりには沢山いる。
クラスに1~3人はいる。
職場にも、同じように、ということです。
ところが、未だにLGBTに対する理解は進んでおらず、当事者は非常に苦しみ、中には自ら命を断つ方も大勢いる、という事実を知ってほしい、と東さんは語られました。
実際、G7中で同性間パートナーシップに関して国レベルでの法的保障が何もないのはすでに日本だけで、差別を禁止する法律も無く、世界的な流れとしては、やはり遅いのが現実。
LGBTとは直接関係ないかもしれませんが、社会進出における男女格差を示す指標:ジェンダーギャップ指数も、2016年は144か国中111位と低く、まだまだ保守的です。
LGBTに対しても、偏見が大きく、
「ホモ・オカマ・おとこおんな」
といった差別的な言葉があったり、からかわれたり、いじめられたり、といったことが未だ後を絶たないとのこと。
そもそも、LGBTに関する誤解が多く、
講演の資料から抜粋ですが、アブノーマルな趣味趣向でもなければ、環境や教育でなるわけではない、ということ。
そして何より、なりたくてなったわけではない当事者は、他者と違う自分自身や、周囲の目を気にして深く悩んでいる、ということを、やはり周りは理解する様に務めるべき、そう私も講演を通して感じました。
魚の例を出すのが良いのか躊躇しますが、魚の性は非常に曖昧な種が多く、育った時の水温や極々微量の環境ホルモンで性が変わるものが多く、また、群れの中で一番大きな個体が雄になる、といった種も多いです。
LGBTはそうものではありません。
本人の意志や趣味、親の育て方でそうなるといったものではなく、本人がある日、自分は皆と違う、と気付くものだそうで、LGBTの親は大抵LGBTではないそうです。
もし、自分の子供や親しい人から、自分はLGBTである、そう打ち明けられた時、
「よく話してくれたね」
「君の味方だから一緒に考えてゆこう」
と言えるだろうか?
これは、とても難しい問題ですが、少なくとも、「それは違う!」「間違っている!」と批判することだけはあってはならないし、今のうちから理解を深めておく環境が大切だなと思いました。
・「男だろ!」「もっと女らしく」といった言動
・「彼女は?」「彼氏は?」「子供はまだ?」といった質問
・いわゆるホモネタを笑いにする
これらは時として、大きく人を傷付けることがあることを知るべきでしょう。
だって、LGBTはマスコミやドラマの中の話でも、東京などの大都会の中にだけある話でもなく、私たちのごく身近に存在する、普通の周りの人、のことなのですから。
その意味で、ぜひ、「Ally:アライ」というものを知ってほしい、そう東さんは訴えていました。
(一般社団法人日本LGBT協会HPより)
アライとは、英語で「同盟、支援」を意味し、LGBTの当事者ではない人が、LGBTに代表される性的マイノリティを理解し、支援しようという考え方、あるいはそうした立場を明確にしている人を指す言葉だそうです。
アライを可視化することで、LGBTをカミングアウトしやすい雰囲気が生まれ、LGBTの対応が推進され、さらにアライが増えて理解が進む、というポジティブサイクルが生まれて欲しい、と締めくくられました。
LGBTという言葉は知っていましたが、全然理解が足りなかったことを実感でき、もっと理解すべきと感銘を受けた、非常に有意義な講演でした。
が、お話を聞きながら、ずっと何かが引っかかる…。
最後に質疑応答の時間があったので、まっさきに手を上げて質問をさせて頂きました。
それは、
「性的マイノリティーを理解することが大切なのは分かったが、小児性愛者の存在は、子を持つ親としてやはり理解できないし、強い嫌悪感を覚えるが?」
ということです。
それに対し東さんは、よくぞ聞いてくれました、というスタンスでお答えいただいたのですが、
東さん自身、実の父親に性的虐待を受けたのだそうです。
そして、小児性愛は同意の上のパートナーシップではなく、明らかに一方的な児童虐待で、断固反対する、と仰っていました。
この言葉で、よりLGBTが理解できた気がしたのでした。
これは、「なかったことにしたくない」というタイトルで講談社から出版されています。さっそく注文したので、読んでみようと思います。
今回の市民大学の講演者は、今回の他にも、柔道の井上康生氏、経済ジャーナリストの須田慎一郎氏、元NHKキャスターの平野啓子氏、雅楽師の東儀秀樹氏と、毎回様々な分野で活躍する著名人の公演が、非常に安価に受講できる素晴らしい企画だと思いました。
ぜひ、皆さんも参加されてみてはいかがでしょうか?
文:鈴木
追記
東小雪さん著作の『なかったことにしたくない』を読んでみました。
衝撃的でした。
娘を持つ父親として、読むのが辛い部分もありましたが、一番辛いのは著者自身であったことは、読めば容易に想像できます。
自分の理解し難いことをタブーとしてなかったことにしようとする社会は、けっして健全ではなく、その事象に直視して考えてみることが、きっと大切なことなんだと思いました。
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住まいマガジン「びお」の、静岡地方版ざます。
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