元別れ
本日も、富士市のパッシブソーラーそよ風搭載の家、平屋の「びおハウス」より現場風景をご紹介させていただきます。
本日の写真は、この家の床材。
徳島県産の厚さ3cmの杉の床材です。
今年は木材利用ポイントが貰えますので、国産材優位です。
社員大工の丸山と、現場監督の宮川が相談しているのは、玄関廻りの框・付け框・敷台それぞれの納め方。
この方が綺麗だとか、こうすると「元別れ」になるからダメだとか、言っております。
はぃ、「元分かれ」とは何でしょうか?
ググっても「元カレと分かれる…」しか出てきません(笑)ので、図解です。
模式的に書きすぎて木に見えませんが、一番左は木です(笑)。
木は製材された後、根元側を「元:もと」、木の先端側を「末:すえ」と言います。
例えば、皮を剥いた丸太の柱は、根元側と先端側で太さが違うので、直径うんcmの丸太、と言っても、どこで直径を測るかによって太さが違ってしまいます。
そこで、丸太の柱は細い方の「末」で測ります。
だから、「末口5寸の丸太」と発注すると、
柱を立てたときの床側の直径は、5寸より太いことになります。
さて、角材になった材料通しを継ぐ(繋げる)とき、この本と末の合わせ方が問題になります。
図のように、元と末を順に合わせて行く継ぎ方を「送り継ぎ」と言います。
一般的な継ぎ方です。
末と末を合わせるのを「行合(いあい)継ぎ」と言います。
反対に、元と元を合わせるのを「別れ(わかれ)継ぎ」と言います。
単純に木目がそこから分かれているように見えることからそう呼ぶのだと思いますが、「別れる」という言葉のイメージから、別れ継ぎは、縁起の良くない継ぎ方、とされています。
丸山と宮川が「元別れになるからダメ」と言っていたのはこのことです。
板には表と裏があります。
年輪の中心側に近い方が裏、表面側が表となりますが、必ず木裏側に膨らんで反るので、敷居や鴨居にはそれぞれ納め方があります。
これは、木の性質上の決まり事です。
上記の元別れなどは、木の性質からではなく、単純に言葉の雰囲気から来た決まり事、なのだと思いますが、建築にはこう言うのが結構残っています。
例えば有名なところで「床挿し(とこざし)」。
床の間に向かって、天井の竿縁や、畳の縁などが直角になる様に納まっている事を言います。
これはやってはいけないとされていますが、建築誌などを見ていると、近年は意匠的に床挿しになっている場合もあります。
元々床挿しは、武家屋敷において、一室だけわざと床挿しにした部屋を設け、そこで切腹したことから、やはり縁起が悪いとなった、と聞いたことがあります。
もっとも、そもそも床の間どころか、和室や畳も無い家が増えた昨今、
「敷居を踏むな!」
「畳の縁を踏んで歩くな!」
「床の間に座るな!」
などと怒る親父は今や絶滅危惧種。
「そんなこと言われたこともない」なんて方も意外と多いのではないでしょうか?
なにせ、カンナも使わない大工さんが居る時代ですから。
鬼門も風水も仏滅も何ら信じていないのに、元別れだ床挿しだなどというのはおかしな話ですが、建築に携わる人間が知らないでは恥ずかしい…とそんなお話しでした。
2013年07月26日
Post by 株式会社 macs
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生存確率50%の超未熟児だった娘が退院して家族がそろった夜に涙してから 家は家族の絆を育む場所だと気付く。地元で百年。これからも社員大工たちと共に創りあげ 家族の笑顔と絆を一生涯守ってゆくのが私の使命。