- 2011.03.09 水曜日
- 昨日は、高田設計事務所さんのモデルハウスにおいて、二階リビングのメリットとデメリットのことに少し触れました。
本日は建築ブログらしく、もう少しこのことを掘り下げてみましょう。
業界では、二階リビングは「逆転プラン」とも呼ばれています。
リビングは一階が定石だから、その逆は逆転プランとなります。
「みんなと同じ」から外れることを恐れる日本人。
小市民の私などはまさにそうですが、一生に一度の家造りでは、失敗が許されませんのでなおさらです。
不安材料として、
1.今は何でもない買い物の2Fへの持ち上げや、来客者への対応が、
歳とってから不便にならないか?
2.半身不随など、万が一自宅での介護を長期に渡り必要とする場合、
ホームヘルパーや家族が介護しにくいのではないか?
3.「永く安心して暮らせる家」と「老後も安心して暮らせる」が両立するのか?
4.防犯性はどうか?
といったところでしょう。
ではまず、一般的に言われている「逆転プラン」について、そのメリットとデメリットを記します。
【メリット】
・みんなが過ごすリビングが、近隣建物の影響を受けづらいので、日当たりが良好。
・上記の理由で、風通しと眺望も良い。
・道路の視線が届きにくく、プライバシーが保ちやすい。
・リビングを勾配天井に出来るので開放的に出来る。
・一階に耐震に有効な耐力壁を設けやすく、地震に強い家に出来る。
・プラン的に総二階にしやすく、建築費を抑えやすい。
【デメリット】
・リビングから直接庭に出られない。
・食料品の搬入に手間がかかる。
・二階のベランダにふとんを干すのが大変。
・来客のたびに一階に降りるのが面倒。
・子供室が一階の場合、子供の帰宅・外出に目が届きにくい。
・加齢で足腰が弱くなった際に階段の昇降が辛くなる。
これらをふまえ、一般的に、
・日中在宅する時間が長い家族
・日照を重視したい家族
・家族の団らんを重視したい家族
・老後までに年数のある若い家族
向きと言われています。
メリットは昨日の写真で一目瞭然ですので、デメリットを中心に、簡単なところから書かせていただきます。
庭には直接出られなくても、ベランダがあればその代わりになります。
昨日の高田設計事務所さんのモデルハウスも、素敵な斜めのベランダが特徴的でしたね。
来客も、現在はモニター付きインターホンが主流ですから、さほど問題はないかと。
ふとんは、乾燥機を使う方なら問題有りませんし、庭に干せる場合はこれも問題有りません。
そもそも、平屋の場合は庭に干すわけですし。
防犯に関してですが、建築業界で一般に言われているのは、「外から見えない家は危険」という事です。
塀や、しっかりした生け垣で敷地を囲ってしまうと、侵入しようとする作業が外部から隠れ蓑となってしまう点と、一度侵入されたら、何をしていても外から分からない、と言うのが一番危険だと言われています。
これは塀や生け垣の問題であり、リビングの位置の問題ではありません。
二階にいる際に、一階に泥棒に入られると分からない!?
という点が逆転プランにおける防犯性の疑問点だと思いますが、これはむしろ、二階で就寝中に一階に入られる、という可能性の方が、二階で団らん中に一階に入られる、と言う可能性より高いと思いますし(今のところ日本ではそこまで危険ではないと思いますが)、
どちらにリビングがあっても、泥棒が侵入しやすい窓の数は、そう変わらない(むしろリビングが一階の方が数は多い)ので、これは大差ないのではと思います。
次に、不慮の事故、及び将来の病気(単に足腰が弱った、は後述)についてです。
まず不慮の事故ですが、骨折などが一番の事由に当たると思います。
これは、ちょっと実験していただくと分かります。
平屋やアパート暮らしでは実験できませんが、プラン上の想像でも出来ます。
自宅に帰ってから、朝出かけるまでの階段の上り下りを数えながら、もしこの間取りが逆だったら、をカウントしてみると、上り下りの回数は、ほとんど変わらないはずです。
そう考えますと、不慮の事故の際には、LDKと水回りと寝室が全て一階にある(または平屋)場合を除き、大変さはそう変わらないはずです。
また、長い人生を考えると、思いもかけない病気も考えられますが、マクスでは私も含め、現場監督達は、介護の現場と住宅建築とを結ぶ資格である、福祉住環境コーディネーターを取得し、正しいご提案が出来る様に務めております。
問題となる病気は、高齢者特有のもの(脳血管障害・パーキンソン・リウマチ・心筋梗塞等内科的疾患・etc)、脊髄損傷や脳性麻痺などの肢体不自由、視覚や聴覚障害等多岐にわたりますが、それぞれ症状が違い、住宅における対応策も異なります。
例えば手すり一つとっても、右が不自由なのか左が不自由なのかによっても違うわけです。
つまり、その病気や症状により、段差・手すり・建具・色彩・スロープはもちろん、トイレ・浴室・キッチン等の設備も、対応策が異なります。
ということは、将来のこうした対応は、その時に症状によって対応する、これがバリアフリーの考え方です。
余談ですが、最近耳にする言葉で「ユニバーサルデザイン」という言葉がありますが、これは、起こった障害(バリア)を解決する(フリーにする)バリアフリーとは考え方が異なり、そもそも年齢・性別・人種・病気の有無を越え、全ての人が使いやすいように、と言う考え方で、公共施設での考え方となります。
つまり、住宅は、あくまでも問題が起きた時の「対応力」が肝心、となります。
さてその上で、最大の問題である、歳をとった際(単に足腰が弱った、も含む)の対応力についてですが、私は次のように考えます。
話がいきなり飛びますが、30年前の住宅事情をイメージして下さい。
ユニットバス・システムキッチン・シャワートイレ・食器洗い乾燥機・浴室暖房換気扇・床暖房・エコキュート・太陽熱発電・住宅でのプラグイン充電自動車…等々、これらはみな存在していませんでした。
つまり、付いてて当然なので、現在では当たり前に住宅の設備として組み込まれている設備機器も、30年前は無かったわけです。
もっと極端にさらに30年遡ってみると、風呂も無い、トイレは別棟、それが当たり前なのでした。
時の流れで、もの凄いスピードでこれらは進歩しましたが、それは「必要=ニーズ」がそれを後押ししたのは言うまでもありません。
現在日本は、世界のどの国も経験したことのない、少子化・超高齢化社会への道をまっしぐらに進んでおります。
現在の日本の高齢化率は約20%、
これが20年後に30%、
40年後には40%に達する、と国勢調査を元に国交省は発表しています。
すると、「予測」ではなく、「定められた未来」として、住宅の新規着工件数は激減します。
そもそも家を建てる人口が減るのに、耐震基準やそれなりの住宅設備をそなえた空き家の中古住宅がどんどん供給されるからです。
これは、既に始まっている「流れ」です。
住宅建設業界ではこれを受け、「新築」から「リフォーム」へ、という大きな流れがあり、民主党政権も長期戦略として、住宅ストックの拡充(要は中古住宅の活性化)を重要政策課題としています。
すると、現在でも大きな市場である、バリアフリーリフォーム・介護保険リフォームは、超成長市場であることが分かります。
すると…
ホームエレベーター、
荷物専用昇降機、
階段昇降機、
(写真はいずれもクマリフトHPより)
こういった、高齢者向けの商品は、飛躍的に改良され、需要が伸びると共にコストも下がって普及して行くことが容易に想像できます。
上記のこれら商品は、開発段階の特別な物でも、新築でしか付けられない物でもなく、現在でも販売されているリフォームにも使える商品です。
現状、価格帯が高価なため、特にホームエレベーターなどは贅沢品といった向きがありますが、先ほどの例を挙げれば、30年前には、エレベーターがある集合住宅などは見かけませんでしたが、現在はどうでしょうか?
4階建てくらいになれば、ついていない集合住宅の方が珍しいくらいです。
これらを詭弁と取るかどうかは別として、将来安価で簡単に付けられる商品は必ず出てくると思いますので、例えば上下同じ所に納戸があるなど、これらの設置さえ考慮したプランであれば、対応は難しくないはずです。
構造躯体さえしっかりした耐久性のある住宅であれば、住宅本体の寿命はかなり長くなります。
しかし、システムキッチン・システムバス・トイレなどのいわゆる住設機器の更新サイクル、いわゆる寿命は、長くても2・30年です。
設備の更新時には、子供が巣立っていたりと、家族構成も変わっています。
その際に、二階から一階へ、という事も難しくないのが木造住宅の良いところです。
だから、「リビングは二階が良い!」ではなく、二階リビングの逆転プランも、敷地や家族の住まい方によっては、十分選択の余地有り、と言う事だと思います。
じゃぁ、そんなマクスの逆転プランて…?
は〜ぃ、異常に長い振りでしたが(笑)、以前の記事「空のリビングの家」に繋がるわけです。
何故“空の”リビングなのか、もうお分かりですね。
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