- 2007.12.17 月曜日
- 昨日の続きで「筋交い」について書かせて頂きます。
大事な部分ですのでやや長くなりますが、分かりやすく書こうと思いますので、お付き合い下さい。
昨日のブログで、電気屋が写っている写真の後に、板倉壁と筋交いと壁下地の間柱が見えます。
通常、下の写真のように筋交いを取り付けます。
(写真は板倉造りの家ではなく、以前ご紹介したティンバーフレームの家のものです)
では、冒頭の板倉の壁と筋交いの写真をご説明する前に、まずは筋交い(すじかい)の意味と働きをご説明致します。
本日は、私が作った模型で、アカデミックに参りたいと思います(笑)。
まず、下記の模型が、家の一部だと思って下さい。
ここに、写真右から地震の力(手ですが)が加わると…
この様にグニャッとなります。
家がこうなってはまずいので、ここに筋交いを入れます。
つまりつっかえ棒です。
そうすると、地震に耐えてくれます。
しかし、この状態で反対側(左)から力が加わると…
またグニャッとなっちゃいます。
つまり、筋交いには「向き」があり、それをバランス良く配置する事が肝要となります。
限られた壁で、筋交いをバランス良く配置するためと、家をより地震に強くするために、下の写真のように筋交いをバッテン(クロス)で入れる場所もあります。
これで地震に強い家のできあがり!
というと、そんなに単純ではありません。
実は、この様に、筋交いを入れて壁を頑丈にするほど、「引き抜き力」という新しい力が発生します。
どういう事かと申しますと、上の写真の柱の端部をアップで見ると…
この様に、地震の力によって柱の端部が持ち上げられて引き抜かれようとしている事が分かります。
これが「引き抜き力」です。
この引き抜き力を堪えるために、建築基準法という法律で、筋交い端部を金物で緊結する事が義務付けられております。
昔は釘でちょんと留めてあればOKだったので、この部分に金物を取り付けましょう!と言うのが耐震補強でもあります。
筋交いのことはお分かり頂けたでしょうか?
では話を板倉工法に戻しますが、板壁を柱の溝に落とし込む板倉工法は、柱と梁で構成する四角形が、厚板によってがっちりと面として構成されるため、実際に実物模型を使い、機械で試験をしてみると、筋交いと同等、場合によってはそれ以上の剛性を発揮します。
さすが地震国日本の伝統工法!!
しかし、悲しいかな伝統工法が故、現在の建築基準法では、「板倉壁=筋交い」とは見てもらえません。
※もっと詳しく書きますと、マクスも加入している伝統木造研究会の試験により、板倉壁も耐力壁(筋交いの入った壁)として認められる方法があります。
ただし、その方法は、板の四方に角材を取り付け、さらにこれでもかというくらい釘を打ち付けなければならず、現段階では、筋交いの取り付けの方が、コスト的にも工事上も良いと、私は判断しております。
そこで、マクスの板倉造り工法では、建築基準法に則って、板壁にプラスして筋交いを設けています。
板倉壁と筋交いのダブル効果でさらに地震に強い、と言うイメージですね。
で、筋交いは、建物の外周や押入の中など、なるべく見えないところに取り付けるのですが、どうしてもどちら側も見えてしまい、それがリビングや玄関などになってしまう部分が出て来ます。
そこを、場合によってはボード下地と合わせて自然素材の漆喰塗りにしたりもします。
ようやく冒頭の写真の説明の所まで来ました。
冒頭の写真の筋交いと下地の間柱は、このためのものです。
そして、この板倉工法の場合、筋交いの金物の取り付けが非常に大変なんです。
金物は、太いビスで留める事になっているわけですが、ビスを取り付けようとしても、板壁が邪魔をします。
だから金物や〜めた、と言うわけにはもちろん行きません。
法律違反ですから。
そこで、上部の金物をこの様に先に取り付けてから、そこに筋交いを差し込み、
下側はあらかじめ筋交いに留めておいた金物を柱と土台にビス止めします。
大変ですが、法律は守ってこそ意味があります。
きっちり守って工事します。 - 板倉造りの住宅 建築現場より | comments (0) | trackbacks (0)
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